創業逸話

創業逸話 「共存共栄」という企業のありかた

創業当時の三和住宅株式会社三和住宅が生れたのは1977年(昭和52年)4月のことです。その年は、日本で初めての静止気象衛星、「ひまわり」が米国ケープカナベラルから打ち上げられた年として記憶されています。日本中がその成功に沸きましたが、まだ日本のロケット技術は安定したものではなく、「ひまわり2号」が国産ロケットで打ち上げられたのはそれから4年も後のことだったということです。

※この年は不思議に話題の多かった年で、折からのカラオケブームの中、人気のアイドルグループ「キャンディーズ」の引退、王貞治選手(巨人)が通算756号のホームラン記録、ロングセラータバコ「マイルドセブン」の発売などが相次いだ。日本赤軍が日航機をハイジャックして、ダッカ空港事件を起こしたのもこの年のことだ。

1977年。よいニュースも悪いニュースも、その頃の日本という国の勢いを感じさせるような時代でした。その当時、三和住宅の渡邉邦男(現・代表取締役会長)は34歳。栃木県北部の町々を訪ね、貸家のオーナーや土地を持つ農家へのあいさつ回りを続けていました。不動産業を始めたものの、まだ経験は浅く、立ち上がったばかりの会社をどう運営していこうかと不安ばかりが先行していたといいます。もともと渡邉が不動産業を志したのは、実家の土地にスーパーマーケットの店舗を建てて貸さないかという引き合いがあり、さんざん悩みぬいたという体験が原点でした。

※先祖からの農地を転用して失敗したらどうなるのか? 
多額の投資をして返済できなかったらどうするのか?
どんな貸し方をしたらいいのか?
借主の会社の経営状況をどう分析したらいいのか?
長期の銀行借り入れの条件は適正なものなのか?
契約途中で解約の事態になったらどうしたらいいのか?

渡邉邦男土地を持つ人間の投資決断には、想像を絶する不安がつきまとうものです。渡邉はこうした地主の心理を身をもって体験し、共有することによって、土地や建物の持ち主の相談相手として役立ちたいという志をふくらませていったのです。
毎日毎日、貸家を経営しているオーナーのもとを訪問し、斡旋を専門に扱う不動産業を開業したという挨拶を繰り返しましたが、どの貸家でもさほどの関心は示してもらえず、商談にはなりません。それもそのはずで、この頃は電話帳に「アパート貸家」と入れておくだけで入居者が集まるという時代だったのです。つまり、貸家オーナーにとっては不動産業など無用の存在だったわけで、創業1年目、三和住宅の最初の月のお客様はたった3人だけという寂しい幕開けでした。

そこで渡邉は土地を持っている農家を訪問してアパートを建ててもらおうと掛け合うことにしました。アパートを建ててもらって、その物件を扱わせてもらうのが手っ取り早いと考えたのです。しかし、こちらも可能性のありそうな農家に一軒一軒飛び込んでみましたが、話し相手にすらなってもらえません。あきらめかけた頃、渡邉は訪ねた先の地主から「あんたはどの家の人だ?」と問われ、親の名前を名乗ったところ、地主は身を乗り出して、「なんだ孝ちゃんの倅か。じゃあ、上がってお茶でも飲んでいきな」と、最前とはすっかり態度が変わり、打ち解けた様子になりました。

渡邉はこの頃から、不動産業というものを少しずつ分かってきたような気になったと語っています。見知らぬ人間同士ではいくら足を運んでも大切な土地や物件を預けてもらえるはずもなく、まず地域の人に名前を知られ、時間をかけて信頼関係をつくってはじめて、仕事のスタートラインに立てるという事実を思い知らされたのが大きかったようです。

「「私は日常の営業活動を通じて多くの人びとと出会い、親密な人間関係を築き、お客様一人ひとりの要望にこたえて、信頼され、選ばれるような会社にならなければ生き残っていけないと思いました」(渡邉邦男)。

※渡邉はこのことを、たまたま出会った「共存共栄」という言葉で表わすことにした。これには、お互いを認めあいながら共存をはかるという意味合いが感じられることから、「共存共栄」が三和住宅の経営理念として浸透していくことになった。

三和住宅は地域のオーナー様に安心で安全な土地活用を提案し、オーナー様の「ゆとりある生活」と、利用者の方々の「便利で快適な生活空間」の創造に貢献できるように、社員や協力業者の皆さんとともに、その実現に全力を尽くしていきたいと願っています。そのため、私たちは「資産活用による地域活性化」という事業ドメインを社員の間で共有し、その実現のために不可欠の「共存共栄」という企業のあり方を選択したのです。そして、それは三和住宅という企業の組織風土も育んできたといってよいでしょう。

経営トップ、マネジャー、社員の一人ひとりがお互いの知恵や行動、努力を認め合い、そのことによって、それぞれの考え方や工夫に刺激を与え合うこと。さらに企業という枠を超えて、オーナー様、協力会社、取引先企業との間でも、共に学び、成長し、栄えること。そこに、お互いに対する感謝の気持ちが生まれるはずです。「共存共栄」という言葉が、皆様と共に歩む三和住宅のこころを雄弁に語っています。

pagetop